手術室

減量手術の効果

手術後の体重減少はどれくらい得られるのか?  Effect of Surgery

手術の効果は確実であるが術式により効果に差異がある。

術式ごとの減量効果術式ごとの体重減少パターン  SOS study 病的肥満に対する外科治療の効果にはいろいろな指標があります。体重減少の程度、肥満に関する合併症の改善率、生存率、生活の質の改善の度合い、他いろいろな尺度があります。そのうちで最も効果を決めるのに簡便なのはやはり『手術によっていくら体重が減るのか』ということです。これは、客観的な指標として数値化が容易です。数多くの科学的な研究が行われ、報告されていますがその中でかなり信頼性の高い研究があります。「SOStrial」という大規模な試験です。これは北欧の福祉国家スウェーデンで行われ、その研究は多くの重要な結果を次々と世に報告してきました。現在も研究は進行中であり今後も多くの重要な結果が報告されてくることでしょう。この研究SOS(Swedish Obese Subjects)trialは2010人の減量手術群と2037人の非手術群(運動療法、食事療法など)に分けていろいろなことを追跡調査しています。参加している患者さんは1987年から2001年までの15年とかなりの長期にわたっています。右の図はこのSOSトライアルの結果の一部ですが、術後の体重減少率超過体重減少率ではありません)非手術群(黄色)に比べて明らかに手術群(緑、青、赤)で良好です。術後1年で急速に体重が減少し、その後は徐々に体重は再度増加してきますが10年を過ぎるとほとんど横ばいです。手術群ではリバウンドをするものの、元の体重まで戻ることはありません。この結果のパターンは他の多くの研究報告でも類似の結果が得られています。もちろん若干の減少率の差異はどうしてもあります。これらのことからいえることは非手術療法は現実的には年単位で見た場合、減量効果を期待することはできない、そして減量手術は手術の種類によりある程度の差異はあるものの結果は確実に出るということが言えるでしょう。

ルーワイ胃バイパス術の体重減少経過 RYGBP

胃バイパス術の減量効果胃バイパス術後の経過 Pories et al40年以上の歴史があり肥満手術がもっとも多く行われている米国においての ゴールド・スタンダードであるルーワイ胃バイパス術(Roux en Y gastric bypass)以下RYGBPの結果はどうでしょうか?上記のSOS研究でも示したようにきちんとした手術を行えば体重は確実に減少します。しかも、減少する体重の値やその減少パターンは複数の研究で驚くほど一致しています。つまり、RYGBPでは術後1年から2年で体重が急速に減ります。多くの研究報告によると減る体重は過剰の体重の70%と言われています(%EWLは70%)。ただし、これは術前のBMIが50台の場合の結果であり術前のBMIが40台の場合は80%程度の効果があるとのことです。実際の体重にすると40〜50Kg 程度減量されることが普通です。術後2〜5年の間に約20%のリバウンドはありますがその後は体重が維持されます。最終的には超過体重(Excess Weihgt)の50〜60%の減少が見込めるといわれています。右のグラフは Poriesらの報告を示していますが、 RYGBPの術後の典型的なパターンを示しています。アイランド・バリアトリックセンターでの成績もこれらの諸外国との報告と驚くほど類似しており、この結果は普遍的なものであると思われます。現在では多くのRYGBPが腹腔鏡下に行われています(LRYGBP)。

胃バンディング術の体重減少経過 LAGB

胃バンディングの減量効果バンドの超過体重減少のパターン(橙のラインは40%)調節性胃バンディング術(Ajastable Gastric Banding:AGB)は胃や腸を切除したり吻合したりする必要がない手術です。そのため、他の術式に比較して手術直後の安全性についてはかなり高いのが特徴ですが効果はどうでしょうか?。もともとアメリカで開発されましたが、ヨーロッパで発展、オーストラリアでかなり普及し、そしてアメリカに戻ってきた手術です。体内に人工物を埋め込む必要があり、アメリカにおいてFDA(Food and Drug Administration;食品・医薬局)はその効果・Lap-Bandオーストラリアからの報告ではバイパスとバンドは同等!?安全性の試験を行いました。現在使用可能なバンドは「LAP-BAND」と「SAGB(REALIZE-BAND)」がありますが、まず前者のラップバンドが認可されました。FDAが最初に行ったラップバンドの臨床試験Aでは術後1年の超過体重減少率(%EWL)は34.5%でした。次に行った臨床試験Bでは6ヶ月で27.2%,12ヶ月で38.3%,24ヶ月で46.6%,36ヶ月で53.6%の超過体重減少率がありました。このアメリカでの結果はヨーロッパやオーストラリアからの報告(%EWL 70%)よりは低い体重減少率でした。一般的にはLAGBの超過体重減少率は50%程度といわれています。実際の体重に換算すると約30kgが減量出来る場合が多いようです。右上のグラフでは超過体重の40%程が減少しそして長期に維持されています。Paru O'Braianらのオーストラリアからの論文では右のグラフのように最終的にはバイパスと同等の効果があるという良好な報告もあります。これらの差異は術後の通院や食事の内容の違いによるとされています。ですから、手術そのものよりも術後の管理によって結果はかなり異なってくる可能性があります

胆膵路変更術・十二指腸バイパス  BPD/DS

十二指腸バイパスの減量効果RYGBPとBPD/DSの超過体重減少率の比較この手術の体重減少効果はルーワイ胃バイパス術よりも若干良好とされています。一般的には術後数年での超過体重減少率(%EWL)は80%程度です。スコピナーロらの報告ではPBDの術後25年の超過体重減少率(%EWL) は70%と報告されており長期の減量効果の維持ができることがわかっています。

腹腔鏡下袖状胃切除術・スリーブ胃切除術  LSG(Laparoscopic Sleeve Gastrectomy)

LSGでは腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術に匹敵するような体重減少が得られるという報告がありますが、比較的新しい手術方法なのでその長期成績は出ていません。長期に体重減少がが維持できるのか、それともかなりの確率でリバウンドしてしまうのか、合併症の改善の程度はどうなのか、予期しなかった長期の合併症があるのかはまだわかっていません。ただ、理論的に考えるとリバウンドの可能性はあるかもしれませんが、予期しなかった大きな長期合併症の可能性は低いと思われます。中期・長期の成績が出ましたらあらためてこの場で報告したいと思います。


このページのデータやグラフの多くは”current Problems in Sugeryのvolume45 No2,pages57-138,feb 2008”より引用しています。

減量手術の効果を見るための有用な指標のひとつである%EWL(%Excess Weight Loss:過体重減少率)は過剰体重の何パーセントが減ったかを示すものです。一般的にもとの体重が重いほど実際の体重は多く減りますが、手術前の体重が少ないほど%EWLは大きくなる傾向があります。ですから研究報告の母集団のもとの体重によってかなり成績に差が出ます。しかし、大ざっぱに言えば腹腔鏡下調節性胃バンディング術(LAGB)は約30Kg,腹腔鏡下袖状胃切除術(LSG)は約40Kg,腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術は約45Kg,腹腔鏡下十二指腸バイパス術(BPD/DS)は50kg以上の減量が得られるということになります。 

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